俺んちっていうか、俺の住んでるアパートは築40年のオンボロで、
けど、ベランダが広いのが、唯一の良いトコロ…だったはずだったっ。
不動産屋まわって決める時、安いのとベランダとで決めたようなモンだったしっ。
だがっ、それはついこの間までのコトで、今は違うっ!
ベランダが広かったせいで、ストーカー宇宙人の着陸ポイントになっちまった!!
つーか、普通ベランダに着陸するかっ!?
着陸するなら空港かNASAにしろっ!!!
「うー…、マジでどーすんだっ、俺っ」
バイトから帰ってきて、当たり前みたいにタダイマって言ってるしっ、
久保田特製の宇宙人カレー…つか、フツーのカレーなんだけど…を
ナチュラルに一緒に食っちまってるしっ、
も、もしかして…、俺って思いっきり馴染んじまってねぇか!?
ソレってなんかヤバくね?
「あー、でも…、ただ単に同居してるだけだし、今んトコはそれほど問題ねぇか…」
いや、大アリだろっっ、俺―っ!!とか、ココロの中で突っ込みつつ、
瞼を閉じたのは眠いからで、ちなみに今の俺はベッドの毛布の中にいる。
ストーカーとか宇宙人とか、明日のバイトとか考えなきゃなんないコトはあるけど、
ふぁあ~…、寝よ。
・・・・・・と思った、がっ!!
眠りについて数分で、俺はある異変に気づき、目をぱっちりと開いた。
そしたら、俺をじーっと見てる目と至近距離で目が合っ…!!!
ぎゃあぁあーーっ、マジでちゅーする五秒前ぇぇっ!!!!
おまけにっ、いつの間にか毛布にだけ包まれてるはずの俺様がっ、
毛布以外のぬくもりに包まれてるっ、思いっきり包まれてるっ!!!
・・・・・あぁ、あったかくて気持ちイイ。
とか、思うワケねぇだろーっ!!!!
「なっ、なんでっ、てめぇがココにっ!!!!」
「ん~? ふつつかモノですが、ヨロシクお願いします?」
「…って、何がふつつかでお願いなんだよっ!!」
「何がって、地球人夫婦の夜のアイサツだけど? ちなみに学習教材は、
奥様はジョシコーセー」
「何が学習教材だっ、ソレって思いっきりエロビデオだろっ!!!」
「さぁ?」
「とか言いつつ、妙なトコ触ってんじゃねぇっ!!!」
ばきいぃぃぃーー…っ!!!!!
ヘンタイ宇宙人に向かって、俺は拳を振り上げてっ、
ばきぃぃぃって、やったはずだったっっ。
そうしなきゃ、俺の貞操は確実に奪われていたっ!
けど、オンボロアパートに鳴り響いた凄まじい音は…、
実は久保田を殴った音じゃなくて…、
・・・二人分の重さに耐えきれなくなった床が抜けた音だった。
しかも、今度は下の階に住んでた大家さんと目が合うっ。
すると、大家さんは上から、ベッドごと落ちてきた俺と久保田を
じーーーーっと見て、ポンっと俺の肩を叩いた。
「ヤるのは良いけど、床が抜けるくらい激しいのは…、ちょっとねぇ」
「ぎゃあぁぁーっ、やってねぇっ、ぜんっぜん何もやってねぇっ!
こいつはただのストーカー宇宙人でっ、そういう関係じゃねぇしっ!!」
「妻デス」
「…って、俺の隣でワケのわかんねぇ紹介すんなっ、指差すなぁぁっ!!」
そんな感じで、結局、俺はオンポロアパートを出るハメになった。
俺らも大家さんも運良く怪我はなかったし、
床はボロくなってたって事で、修理費はまぬがけたけど…、
うわぁぁぁっ、ウソだっっ、誰がウソだと言ってくれぇぇっ!!
そして、少ない荷物を手にアパートを出た俺の肩を、
今度は元凶である久保田がポンっと叩いた。
「そんじゃ、これから二人の門出ってコトで、新居に行きますか」
「はぁ? 新居?」
「新婚だから愛の巣って言った方が、わかりやすい?」
「だっ、誰が新婚だっっ、このエロ宇宙人っ!!!」
オンボロアパートを出たら、金もない保証人のいない俺には、
新しい住処を探すのは難しい。
だから、とてつもなく不安を感じながらも、仕方なくっっ、
久保田と一緒に新居に向かった。
あぁっ、マジでどうなっちまうんだっ、俺の人生っ!!!
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