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小説
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あー…、やっとバイト終わった。


マジで疲れた、すんげぇ疲れた~。
早くメシ食って風呂入って寝てぇ~。
そんなカンジにヘトヘトのクタクタになりつつ帰り着いたのは、宇宙人いわくの愛の巣っ。
しかも、マンションの入り口ですれ違った管理人さんに、

「あ、久保田さんの奥さん、こんばんは」

とか、すんげぇナチュラルに言われたけどっっ、
愛の巣とか夫婦とか俺は認めねぇっ、断じて認めねぇっ!!
つか、いつの間にアイツの脳内だけじゃなくて、
世間的に夫婦になってんだっっ!!
オトコ同士だとかっ、世間の荒波とか冷たい風はドコへ行ったんだぁぁっ!

「あ、久保田の奥さん。これ貰いものですけど、たくさんあって食べきれないので良かったら…」


もらっちまったウマそうなリンゴの赤が目に染みるぅぅっ。
チクショウっっ、世間のあったかさに思わず涙が出ちまいそうっ。
だーけーどっ、俺は奥さんじゃなーーいっ!!!!
いくら世間があったかくても、視線が生あたたかくともっ、
コレだけは断固否定するっ!!!!

たとえ世間や区役所が認めても、俺は認めねぇぇっ!!

なんて思いつつも、俺に子供を産ませたいヘンタイ宇宙人と、
晩飯のカレーが待ってる部屋のドアを開け、リンゴの入った袋を片手に、
限りなくナチュラルに、ただいまーと部屋に入る。
ホントにすっげナチュラルすぎて、もはやツッコミを入れる気力すらねぇしっ。
激しく頭を抱えたい気分になりながら、いつものようにリビングに向かう。
そしたら、ソコにはソファーに座って新聞を読んでる宇宙人…じゃなくて、
「やぁ、おかえり」
なんて言う、ゴキブリがいたぁぁぁぁっ!!!!!

「顔を見るなり、ゴキブリとはご挨拶だね、時任君」
「なんで、俺の名前知ってっていうかっ、ヒトの思考を読んでんじゃねぇよっ!」
「私の名前は、真田だ」
「聞いてねぇしっ!!!!!」

ココに最初に来た日、真昼の星になったはずの黒スーツっ。
なんっっで、コイツがココにいるっていうか、
ベランダの窓が思いっきり割れてるしっ!!

「ベランダから来たってコトは、てめぇも宇宙人だなっ!!」

ベランダから来たアヤシイ奴とかヘンタイは、もれなく宇宙人。
そんなのが、ジョーシキになりつつある俺の日常っ。
なんでだっ、なんでなんだっ!!
なんで、宇宙人は地球でも日本でもなくて、俺に侵略して来るんだぁぁっ!
つか、とりあえずベランダに着陸すんのはやめろっ!!!
ココはNASAじゃねーっ!!!
けど、そんな非現実的な日常に悩み叫ぶ俺に向かって、マジメな顔をした真田は、
不気味な笑みを浮かべて自分の正体を明かした。

「君は何か勘違いしているようだが、私は宇宙人ではない…、元カノだ」

 

・・・・・・・は?
い、今、なんかすんげー幻聴が聞こえた気ぃすんだけど?
っていうか、目の前にいらっしゃる黒スーツは、
どう見ても男で、オトコでオトコ…、だよな!?
コレがオンナだったら、なんのイリュージョンだってくらいっ、
オトコで、オールバックのアヤシイおっさんにしか見えねぇしっ!


「何だったら、確認してみるかね?」
「とか言いつつ、脱ぐなぁぁぁぁっ!」
「私は脱ぐとスゴイのだが…」
「スゴイって、何がスゴイんだよっ!!」
「同棲してるからって、良い気にならない事だ」
「同棲じゃねぇっっ、同居だっ、同居!!」
「・・・・・まさか、もう子供が」
「デキてねぇよ…っていうか、デキるかぁぁぁっ!!!!」

俺は男だっ、コンチクショウっ!!!!!

話してるのは日本語なのに、ぜんっぜん言葉通じねぇしっ、
やっぱコイツも宇宙人だっ!
しかもっ、元カレじゃなくて、元カノっ!
そんな宇宙人真田と宇宙人久保田が…とか想像したら、
なんか、いきなり視界がブラックアウトしそうになった。

「ちなみに彼との初キスは、車の中だった」
「誰もそんな甘酸っぱい思い出なんか聞いてねぇよっっ!!!!」


言葉が通じない元カノ宇宙人は、なぜかいきなり甘酸っぱい思い出を語りはじめるしっ、
うあぁぁぁぁっ、もうどうすりゃいんだっ!
オーマイガーッ!!!!
殺虫剤を噴射したい気分になりながら、新たな宇宙人の侵略に頭を抱える。
そしたら、正義の味方…じゃなくて、どこかに行ってた宇宙人がのほほんと帰ってきた。

「アレ、そのリンゴどうしたの?」
「…って、目の前のこの状況は思いっきりムシかよっ!!」
「この状況って?」
「ほらっ、コレっ、お前の元カノ!」
「モトカノ?・・・あ、ゴキブリ」


バキュンッ、バキュンッ、バキューーーンッ!!!!!


ぎゃあぁぁぁっ、何か目の前で元カノがっ、黒スーツがっっ!
物凄い音とともにキラリと真昼じゃなくて、
夜空の星にぃぃ…っ!!!

「うーん、今日はいつもより、星が綺麗だぁねぇ」
「って、アレって元カノ!?」
「モトカノ?そんなの居たっけ?」
「さっき居ただろっ!初キスは車の中とか、なんとか言ってたしっ!」
「初キス? ソレなら車じゃなくて、二人の愛が激しすぎて床が抜けた部屋でだったよねぇ。
ちゅってしたら、お前は真っ赤になっちゃって…」
「って、俺らのコトじゃねぇっていうか、過去を勝手に思いっきりねつ造すんじゃねぇぇっ!!」

そんなこんなで黒スーツは星になり、事実は天の川の中っ。
果たして、黒スーツは本当に元カノなのかなんなのかっ?!
謎が謎を呼びっ、風雲急を告げるのか告げないのかっ、
宇宙人に侵略されていく、俺の日常っ!
さりげなく、尻を撫でようとするエロ星人に、
世間の生あったかさに、俺は勝つコトができるのかっ!?

「ねぇ、そろそろ俺の子供・・・」
「産めるかぁぁ…っていうか、俺はオトコだぁぁぁっ!!!」
 

このお話は、俺こと時任稔が宇宙人侵略から地球じゃなくて、
テイソーを守る宇宙規模で壮大な物語である。


・・・・・つづく?


 

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